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めいじかいか あんごとりもの
明治開化 安吾捕物
14 その十三 幻の塔
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,140 字 · 31 页
短銃を握れば六発が一ツの孔を射ぬきます」
こればかりは主人も初耳であったらしい。しばらくは言葉に窮していた。
「島田も化け物も所望しないと云うのだな」
主人の声は噛んで吐きすてるようだった。一成はうなずいて、
「左様です。父の意志ではありませぬ。葉子が自ら所望しました。先生の不具の身にいささか憐れみの志をたてたのは滑稽ですが、その志に濁りや曇りはありませぬ。葉子の覚悟は一途です。至純です」
「ようし。さがれ。それがその方らの本心か。大狸に化かされるな。今に目のさめる時がくるぞ」
二人の若者はそれには答えなかった。ただ鄭重に会釈して、静かに退去した。ローソクのゆれる火影に、主人の顔が一ツ残った。まるで気の狂った猫のように、その目に憎悪の閃光が宿っている。ベク助はここでも背筋に悪感の走るのを覚えた。
「どういう関係の奴らだろう。まるでオレには解せないが」
と、ベク助は邸を脱出して帰途についた。主人の標札だけは見てきたが、山本定信とあった。
ベク助は七宝寺へ戻ってきて、五忘に訊ねた。
「山本定信てえのは何者だね」
五忘の目がギラリと光った。
「貴公、本日、何を見たのだ」