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めいじかいか あんごとりもの
明治開化 安吾捕物
14 その十三 幻の塔
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,140 字 · 31 页
しかし熊を斬り殺して、熊肉を食いつつその場に倒れ伏して死を待つうちに、悪運つよく生き返ったばかりでなく、すッかり人相が変り、別人に誕生してしまった。
そこで箕作りのベク助と相なったワケだが、ここに一ツだけ変らぬ物があった。ベク助が人に肌を見せないのは、そのためだ。
肌さえ見せなければ、生れ変ったこの人相、肌を見せないことが多少怪しみをうけても、真の秘密が見破られることは有りッこないとベク助は自負していた。油断のならない五忘だが、肌を見ない限りは、ほかに見破る手掛りはないはずだ。
「小野の小町の弟の朝臣だなア。ハッハッハア」
と、又してもチクリとやられたが、何を小癪なと、もうベク助は相手にならないことにしていた。
すると、五忘は高笑い。
「なア、ベク助朝臣。ガマと自雷也をしょッてちゃア、重たかろう」
まさにベク助の心臓を突き刺す一言。人殺し、牢破りの兇状もち大工の新八の取り換えのきかないのが脊中の皮だ。ガマと自雷也、天下一品とうたわれたホリモノ。今では天下一品がうらめしいのである。これあるためにベク助になりきれないのがうらめしい。
大胆不敵のベク助も色を失ってキッと立つ。