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めいじかいか あんごとりもの

明治開化 安吾捕物

坂口 安吾

17 その十六 家族は六人・目一ツ半

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,745 字 · 44 页

青空文庫

ゲジゲジの唐変木め」

オカネが怒鳴り返した。銀一はそれにはとりあわず、車にのって去った。患者からの迎えであるが、むろんそのあとでは必ず妾宅へまわるのが例であるから、出がけにこれぐらいのヤリトリは無事泰平の毎日の例にすぎないのである。

銀一をのせて患家へとどけた車夫の太七、カラ車をひいて戻ってきて、待っていたお志乃をのせて去る。浜町の伊勢屋から昼のうちにお約束の口がかかっていたのである。伊勢屋の隠居はお志乃の旦那の一人であった。

オカネは出ようとするお志乃の後姿に向って、

「一日二十四時間、夜も昼もアンマにゃア働く時間なんだ。一晩に旦那を一軒まわりゃア用はねえと思ってやがる。旦那なんて丸太ン棒はテイネイにさするんじゃねえや。いい加減にきりあげて、さッさと帰ってこい。テメエから身を入れてさすってやがる。助平アマめ」

貧乏徳利の冷酒を茶ワンについでグイとあおりながら当りちらしている。これがオカネの唯一の人間なみのゼイタクだが、オカズはいつもオシンコだ。

そこへ表の戸を叩いて、

「今晩は。オヤ。暗いね。もうおやすみですか」

「アンマのウチはいつも暗いよ。チョウチンつけて歩くアンマは居やしねえや」