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めいじかいか あんごとりもの

明治開化 安吾捕物

坂口 安吾

17 その十六 家族は六人・目一ツ半

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,745 字 · 44 页

青空文庫

「石田屋ですけど、弁内さん、いますか」

「弁内! いるかとよ!」

オカネの吠え声に、二階の弁内、ドッコイショと降りてくる。

「石田屋さんだね」

「ええ。すぐ来て下さいッて」

「お客さんは、誰?」

「いつもの足利の人ですよ。ほかにもお願いしたい方がいるそうです。お願いします」

と、商人宿石田屋の女中は帰って行く。弁内は二階で着替えながら、

「どうやらお座敷がかかったか。この節は流しでなくちゃア、ダメらしいや。師匠の看板なんざア、てんで物を云やアしねえや。ベラボーめ。腕自慢のアンマが流して歩けるかい。いよいよ東京もつまりやがったな」

「お名ざしで口がかかりゃア結構だ」

「ヘッヘ。チョイと御身分が違います」

弁内は道具一式を包んだ物をぶらさげて、暗闇の階段を器用に降りて行く。出がけにハバカリへはいる。まだハバカリにいるうちに、又もや表の戸を叩く音。

「頼もう。アンマのウチは暗いな」

「目の玉があると思って威張りやがるな。暗いが、どうした。オカネの顔を見せてやろうか」

「化け物婆アめ。相変らず冷酒のんで吠えてるな。妙庵先生のウチの者だが、アンマを一匹さしむけてくれ」

「自分で脈がとれねえかよ、ヤブ医者野郎め」