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めいじかいか あんごとりもの

明治開化 安吾捕物

坂口 安吾

09 その八 時計館の秘密

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,134 字 · 43 页

青空文庫

それぐらいは心得ているよ。安心して話してごらん。とッくに助けてあげたものを」

「ええ。でも今はメクラなんです。もとは旗本の娘ですけど」

「ほう。私も旗本のハシクレだが、姓はなんと仰有るのだね」

「嫁ぎ先の姓ですけど、梶原というのです」

もしも暗闇でなければ、正二郎の見るも無慙な衝撃の色、駒子の胸に閃くものを与えた筈だが、いかんせん真の闇。ああ、なんたる運命のイタズラか。愛する駒子がわが実の子であろうとは! 駒子は無言の正二郎をいぶかしみ、

「あら。梶原という旗本、ご存じですの? ぶるぶるふるえてらッしゃるんじゃないこと?」

「ナニ、二三その姓に心当りはあるが、お前のお母さんに似た人は、さて、その心当りがあるかなア」

「でも、私は梶原という旗本の子供じゃないのよ。梶原の子供は姉さんだけ。その旗本は寛永寺の戦争で死んだそうです。私の父は望月彦太という旗本」

「望月彦太!」

「ご存じ?」

「きいたことのある名だが」

「そうですッてね。御家人仲間で鼻ツマミの悪ですッて。私がきいているのは悪名ばかり。顔を見たこともないのです。父のおかげで、お母さんは今の不幸に落ちこんだのだそうです。