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せいざ

星座

有島 武郎

1922(大正11)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,460 字 · 235 页

青空文庫

……ねえ? ねえとくりゃ買うだけだ。おい婆や……もっとよく顔を見せろ。ふむ、お前も末座ながら善人の顔だ……酒を買ってきてくれ。誰かそこいらに金を持っている奴はないか。俺の寿命を延ばすとおもって買ってきてくれ。飯なんぞもぞもぞと食ってる奴があるかい、仙人みたい奴らだな」

柿江がそうそうに飯をしまって立とうとした。それを見ると渡瀬はぐっと癪にさわった。

「柿江……貴様あ逃げかくれをするな。俺は今日は貴様の面皮を剥ぎに来たんだ。まあいいから坐ってろ。……俺は柿江の面皮を剥ぎに来た、と。……だ、そうでもねえ。俺は皆んなに泣いてもらいに来たんだ。石岡、貴様はだめだ。貴様のようなファナティックはだめだとしてだ、……おい、皆んな立つなよ。……何んだ、試験だ……試験ぐらい貴様、教場に行って居眠りをしていりゃあ、その間に書けっちまうじゃねえか」

「俺に用がなければ行くぞ」

石岡が顔色も動かさずにそういいながら座をはずしかけた。

「石岡、貴様はクリスチャンじゃねえか。一人の罪人が……貴様はいつでも俺のことをそういうな。いんやそういう。……罪人が泣いてもらいたいといっているのが聞こえなかったんか。