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はるがくるまえ
春がくる前
小川 未明
「まなびの友」1921(大正10)年3月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,341 字 · 5 页
さびしい野原の中に一本の木立がありました。見渡すかぎり、あたりは、まだ一面に真っ白に雪が積もっていました。そして、寒い風が、葉の落ちつくしてしまった枝を吹くのよりほかに、聞こえるものもなかったのです。
木は、こうして毎日、長い寒い冬の間、さびしいのを我慢していました。それにつけても、過ぎ去った春、夏、秋の間のいろいろ楽しかったこと、おもしろかったことを思い出していたのであります。
その中でも、くびのまわりの赤い鳥が、枝に巣を造って、三羽の雛をかえして、三羽の雛が仲よく枝から枝へ飛びうつっていましたのを、木は忘れることができませんでした。
「いまごろは、あの親子の鳥はどこへいったろう。さだめし暖かな土地へいって、ああして、楽しくさえずったり、飛びまわったりしているであろう。そして、また、こちらが春になって暖かになったら、忘れずにやってくるかもしれない。そのときは、もう三羽とも雛鳥は、大きくなっていることだろう。」と、木は思いました。
こうして、木立は、毎日、風の音を聞いて、白い雲を見つめるよりほかになかったので、さびしく、退屈でなりませんでした。
「ああ、早く春がきてくれればいい。