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はるがくるまえ
春がくる前
小川 未明
「まなびの友」1921(大正10)年3月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,341 字 · 5 页
」と、独りで野原の中で脊伸びをして、あくびをしましても、だれもそばで聞いているものもなかったのです。
しかるに、ある日のこと、一羽の小さなうぐいすがどこからか飛んできて、この木のこずえに止まりました。
木は、さっそく、このうぐいすに話しかけたのであります。
「うぐいすさん、見れば、まだおまえさんはお若いが、この寒いのにどこへおゆきなさるのですか。そして、どこからおいでなさいました。」と、木立は、うぐいすに問うたのであります。
すると、年こそ幼いが、りこうそうなうぐいすは、木のいうことを頭を傾けて聞いていましたが、
「私は、あちらのふもとのやぶの中からやってきました。私は、お母さんといっしょに、そのやぶの中で暮らしました。いい香いのする花が咲いていました。また赤い実がなっていました。それは、いいところでした。私は、お母さんといっしょなら、けっしてよそへはゆきたいなどと思うことはありません。
けれど、平常お母さんは、私に向かって、町の方へいってはならない、おまえのようなよい子がいったら、きっと人間が捕まえて、かごの中に入れてしまうだろう。これまで、このやぶから出たもので、いくたり人間に捕まって帰ってこないものがあるかしれない。