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はるがくるまえ
春がくる前
小川 未明
「まなびの友」1921(大正10)年3月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,341 字 · 5 页
しかし人間は殺すのではない。かえって、うまいものを食べさせ、暖かにして、ときには水も浴びさせてくれて、大事にしてくれる。けれど、もう一生帰ってくることができないのだから、町の方へいってはならないといわれました。
私は、なんだか町を一度見たくてしかたがありません。たとえ、いくら見たくても、お母さんを残してゆく気は起こらなかったのです。
その私の大事な、そして、このうえなく私をかわいがってくださいましたお母さんが、この秋、病気で死んでしまわれたのです。私は、気が狂いそうでした。毎日、悲しくて泣きあかしました。そのうちに冬がきて雪が降りました。しかし、私は、長い間棲んだ、そのやぶを離れる気はしなかったのですが、このごろになって、せめては、一度なりと町へいって、その景色をながめたり、また私どもの仲間の生活を見てきたいものだと思って、いま、旅立つ途中にあるのでございます。」と、若いうぐいすは、目に涙をためて答えました。
木は、しばらく、黙って聞いていましたが、
「おまえさんは、幼いけれど、なかなかしっかりしていなさる。それなら、町へいっても人間に捕らえられるようなことはあるまいから、見てきなさるがいい。