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ひるのはなび
昼の花火
山川 方夫
「三田文学 第四七三巻第一号」三田文学会、1953(昭和28)年3月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,030 字 · 15 页
光をたたえた巨大な泉に似た青空。鋭い雷声を合図に、白い雲ひとつないその天空に打ち揚げられ、細かな白金の矢をきらめかせ茶褐色の煙をただよわせて、透明な、はてしない大空の滴るような紺青のなかに溶け、音もなく消えて行く花火。昼の花火。いま、現に見ているのも野球ではない。女との、そして自分だけの、真昼のその花火なのにすぎない。
女が、また拍手をはじめた。野球に、慣れてきたのだろうか。
放心したようなその目が、じっと前をみつめている。
「……どこ見てるの」
軽くいった。
「森。森を見てるの」
すぐ答えた。
はっと、彼はわかるような気がした。女の瞳には、それまでは焦点がなかったのだ。いま、もしかすると二人は、同じものを見ていたのかもしれない。
女は拍手を止めなかった。それは、いやに間のびした拍手だった。
女にならって、はるかな森の青葉に、彼も拍手をはじめていた。
遠く、森のやわらかく膨らんだ葉末が、波を打つように動いている。風が渡るようだ。緑の枝を繋げていた外苑の木立の、ざわめいて嫩葉がきらきらと氾れるように一面に光るさまを、彼は目に浮かべた。若い夏の、みずみずしい新緑の光だけを、彼はみつめていた。