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くらいそら

暗い空

小川 未明

「早稲田文學」1908(明治41)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,106 字 · 11 页

青空文庫

けれど一人の人影すら見えなかった。しかもその辺には、油の詰った石油鑵が幾万となく積み重ねてあるのだ。若し賊が来てそれを盗んで行っても分らない筈だが、其様手ぬかりをする礦場ではないと思った。して見ると何処にかきっと人が隠れて私のする様子を見守っているに相違ない。若し私が何も別に悪いことをせなければ、入って四辺を見物する位のことだけは見逃して置いて若し悪いことをすれば直に捕えて殺してしまうという考えかも知れない。殺す? 然り殺す! このあたりにいる土方などは、決してそれ位のことをやりかねない。それにしても何して私が此処へ来るということを彼等が知って隠れていよう。やはり人がいないのだ。全く居ないのだ!

して見とやはり、此処も廃井ではあるまいか? いや其様筈がない。烟突から黒烟が上っている。彼様に熾に火が燃えている。彼様に機械が運転している。人のいない筈がない。きっと皆んな何処へか出た留守でないか。それにしても一人も残っていないという筈がない。私は全く分らなくなった。

其様ことが如何にも不思議に思れて、四辺を見物するというよりか人を探ねて、歩き廻ったという方がよかったろう。