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げつめい
月明
豊島 与志雄
「新小説」1921(大正10)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,772 字 · 34 页
その日見た――初めてのようにしみじみと而もひそかに見て取った彼女の姿が、頭の奥にこびりついていた。――地引網が上ってくるのを、まじろぎもしないで見つめてる立ち姿が、肩がしなやかにこけて、臀から股のあたりにむっちりとみがはいっていた。――水から出て海岸の砂に寝そべりながら、赤く日に焼けた上膊から剥がれる薄い皮を、しなやかな指先でそっとつまんで引張りながら、
「こんなに皮がむけてきたわ、もう一人前ね。」……だが、濡れた海水着がぴったりとくっついてる痩せた胸には、姉のに比べると余りに小さな、ぽっつりとした乳房が淋しかった。――湯から出てお化粧をしてる所を覗くと、「見ちゃいやよ。」と云いながら、なお平気で彼の眼の前に曝してる半裸体の、他が日に焼けてるせいか、海水着のあとが殊にくっきりと白くてこまやかだった。――縁側からぶら下げてる足指の子供々々した爪の恰好に、梨をかじりながら見とれていると、その足がぬっと前へ出たので喫驚した……が、瞬間に立ち上った彼女は、ぼんやり見上げた彼の眼へちらと微笑みかけた。その顔が、眼ばかり大きくて真白だった。
強く握りしめていた掌の小鳥に彼はふと気がついて、それを低い松の小枝に放してやった。