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ほんいんぼう・ごせいげんじゅうばんごかんせんき
本因坊・呉清源十番碁観戦記
「読売新聞 第二五六九二号、第二五六九三号」1948(昭和23)年7月8日、7月8日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,884 字 · 6 页
上
対局前夜、夕方六時、対局所の小石川もみじ旅館に両棋士、僕、三人集合、宿泊のはずであった。翌日の対局開始が、朝九時、早いからである。
僕が第一着、六時五分也。本因坊、六時五十分。さて、あとなる、呉氏が大変である。
ジコーサマの一行が呉氏応援に上京し、呉氏の宿所へ、すみこんだ。すみこむだけならよかったのだが、即ち、これ宗教なり、よってオイノリをやる、一日中、やるのである。
宿所のオヤジ、カンシャクを起して告訴に及ぶ。哀れ、神様及びそのケン族は、警察に留置さる。呉氏、慌てふためき、これをもらい下げる。時に対局二日前の夜也。
呉氏ら、リュックサックをかつぎ神様をまもって、警察の門からネグラをもとめて行方をくらましたが、ウカツ千万にも、日本中の新聞記者が、この行先をつきとめることを忘れていたのである。
キチョウメンな呉氏が、約束の時間に現れないから、さてこそ神託によって禁足か。捜索隊が東京、横浜に出動する。徒労。悲報のみ、つゞいて至る。
深夜、十二時十分前、もみじ旅館の玄関に女中たちのカン声が上った。呉氏がひとりヒョウ然と現れたのである。