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ほんいんぼう・ごせいげんじゅうばんごかんせんき
本因坊・呉清源十番碁観戦記
「読売新聞 第二五六九二号、第二五六九三号」1948(昭和23)年7月8日、7月8日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,884 字 · 6 页
今日は階下の奥座敷で対局。呉氏、今日は半袖ワイシャツに白いズボン。昔、金満家の大邸宅だったというこの旅館の庭は、深い緑が果てもなく、静寂が、目に心にしみてくるのであるが、こう猛暑では、何がさて、あつい。
私も色々の対局を見たが、対局に、こんなに思いやりを寄せる旅館は、初めてだ。こゝのマダムが囲碁ファンで、まだ若い美人にも似ず、相当に打つのだそうである。
今日は、立会人のほかは、全然見物なし。
呉氏も今日は、目をパッチリと、ねむそうだった昨日の面影はミジンもない、貧乏ゆすりをしながら、食いこむように、かがみこんで考えている。
本因坊は、まさしく剣客の構えである。眼は、深く、鋭く、全身、まさに完全な正眼だ。
両方で、時々、むずかしい、と呟く。十時にビワがでる。本因坊はアッサリ食べ終り、呉氏はビワと格闘するように食べ終って、ギロリと目玉をむいて、盤を睨む。
国籍異る世界最高、第一人者が名誉をかけて争う国際試合は、日本の歴史において、これが最初だ。果して、この歴史的争碁が、いかなる結果に終るであろうか。