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とうきょうようさい

東京要塞

海野 十三

「サンデー毎日」毎日新聞社、1938(昭和13)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,341 字 · 37 页

青空文庫

「うん、そのことだが――」と五郎造は幾分苦しそうに眼玉を白黒させていたが、

「なあに、生命を助けてくれたお前さんのことだあね、先方が信用するように、わしの親類とかなんとかいっとくよ。何しろ職人の数が揃わないことには、前もってちゃんと決っている工事がそのように進まないことになるから、わしはうんと叱られた上、大変な罰金をとられることになっているんだ。だからお前さんがいってくれりゃ、吉治の分も、わしの分も、二重の生命の恩人となるわけだよ。ね、いいだろう。一つうんと承知をしてくれよ」

正木正太と名乗る半纏着の男は、ようやくのことで五郎造の薦めを応諾した。そしてシンプソン病院を辞去したのであるが、彼は寒夜の星を仰ぎながら、誰にいうともなく、次のようなことを呟いたのだった。

「どうも古くさい狂言だ。だが、古いものは古いほど安心して使える、といわれるが、なるほど尤もな話だなあ」

忠魂塔

その当時、極東には国際問題をめぐって、ただならぬ暗雲が立ちこめていた。

中国大陸には、大きな戦争が続いていたし、その戦争に捲きこまれていないいくつかの大国も、てんでに武装戦備を整えて、いつでも戦雲渦巻くその中心へ向って進撃できるように、すっかり準備は出来上っていた。