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えいぞうのし

栄蔵の死

宮本 百合子

「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社、1981(昭和56)年12月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 38,295 字 · 77 页

青空文庫

たりするばかりであった。

病気になったその日からお君は絶えず、

どうしよう

と云う感じに迫られて居た。

この考えは、何事をもたじたじにさせた。

只どうしようと云うばかりに国許へは一度も知らせてやらなかったし、弟に来てくれとも云ってやらなかった。

それが、どう云うわけと云うではなく、只、どうしていいか見当のつかない様な心から起った事である。

塩からく、又生ぬるい涙が、眼尻りから乱れた髪の毛の中に消えて行った。

お金は、行こうともしずにピッタリお君のわきに座って居る。

お君は、救を求める様に、シパシパの眼をあいたりつぶったりして居ると耳元で、何かが、

「お父さんに来てもろうたがいい

と云う様に感じた。

お君は、いかにも嬉しそうに、パッとした顔をして、一つ心に合点すると共に、喜びを押えつけた様な低い鼻声で、

「父はんに、来てもらお思うとるんやけど、どうどましょうなあ。

と云った。

そうさねえ、それも悪かああるまいよ、

来てどうにかなればねえ。

けど、何んに来たんやら分らない様にして、只食べるばかりで帰られちゃあなお尚だが。

そいで、まあ、父さんでも来たら何ぞって云うあてがあるのかい。