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えいぞうのし
栄蔵の死
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社、1981(昭和56)年12月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 38,295 字 · 77 页
気がまぎれないのでいろいろの事に思いふけって、
「お君もほんに、一気な事をせん様に云うてやらんけりゃあなあ、
あのお金はんに、いびり殺されて仕舞う。
などと思って居た。
十三の年から東京に出て、他人の中に揉まれて居るあととりの達の事、お君の事などが入りまじって心配になって、もう一っそ一思いに、夫婦と、子供等一っつながりになって、ボチャンとやってしまいたくなどなった。
東京からの便りを待って、お節は暗い日を送って居た。
(三)
六年で出て見る東京の町は、まるで、世が変った様になってしまって居る。
栄蔵は、汽車を乗りるとすぐから、うっかり傍見も出来ない様な、気ぜわしい、塵っぽい気持になった。
ぐずぐずして居ると突飛ばされる、早い足なみの人波に押されて広場へ出ると、首をひょいとかたむけて、栄蔵の顔をのぞき込みながら、揉手をして勧める車夫の車に一銭も値切らずに乗った。
法外な値だとは知りながら、すっかり勝手の違った東京の中央で、大きな迷子になる事も辛かったし、十銭二十銭の事に、けちけちする様に思われたくないと云う身柄にない見えもあった。
広い通りや、狭い通りを抜けて、走る電車の前を突切る早業に、魂をひやしてお金の家へついたのは、もう日暮れに近かった。