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えいぞうのし

栄蔵の死

宮本 百合子

「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社、1981(昭和56)年12月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 38,295 字 · 77 页

青空文庫

何しろ、まだ、ここへ来て幾いだけもたたない人なんですしするから、手ぬかりが有っちゃあ私の落度だと思ってねえ。

実の娘より心配するんですよ、ほんとに。

病気の経過だの、物入りだのを、輪に輪をかけて話して、仕舞いにはきっと、自分の益になる方へと落して行った。

栄蔵は、いやな女だと思いながら、我慢してその話をきき終るとすぐ、お君の部屋へつれて行かせた。

すぐ、襖一重の隔たりだのに、何故、始めから此の部屋へ通さないのかと云う様な、つまらない不平まで起って来た。

枕元に座ると、お君はもう何とも云えない気持になって、

父はん、

よう来とくれはったなあ。

と云うなり、この半年ほどと云うもの堪え堪えして居た涙を一時にこぼした。

「どうや、

母はんが偉う案じとる。

わしも、こんなやさかい、来んとよかろう云うたんやけど、行け行け云うたので出て来たんや。

さほどでもあらへんやないか、

やせ目も見えんやないか、なあ。

病後の様に髭を生やして、黒目鏡をかけた貧しげな父親の前に、お君は、頬や口元に、後れ毛をまといつけながら子供の様に啜泣いて居た。

ほんによう来とくれやはった、