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えいぞうのし

栄蔵の死

宮本 百合子

「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社、1981(昭和56)年12月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 38,295 字 · 77 页

青空文庫

幾度も幾度も繰り返して、まるで、饑えた犬が、牛の骨をもらいでもした様にして見るので、銀地へ胡粉で小綺麗な兎を描き、昔の絵にある様な、樹だの鳥だのをあしらった表紙も、もう一体に薄墨をはいた様になってしまって居る。

そのぼやけた表紙から、はじけた綴目から、裏まで細々と見てから、中についた幾枚もの写真を、はたで見るものがあったら仰天する位の丁寧さでしらべて行った。

何々の宮殿下、何々侯爵、何子爵、何……夫人、と目にうつる写真の婦人のどれもどれもが、皆目のさめる様な着物を着て、曲らない様な帯を〆、それをとめている帯留には、お君の家中の財産を投げ出しても求め得られない様な宝石が、惜し気もなくつけられて居る。

どの顔にも、――それは年取ったと若いとの差は有っても――満足して嬉しがって居るらしい、又金持らしい相があると、お君は思った。

これにくらべて見ると、いつだったか、夜一寸出た時に、おじいさんの卜者に見てもらった時に、

貴方は、苦労する相ですぞ。

気をつけんきゃあならん、なあ、

金と子の縁にうすいと出て居る。

と云われたのが事実らしく思われて、暗い気持になった。