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えいぞうのし

栄蔵の死

宮本 百合子

「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社、1981(昭和56)年12月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 38,295 字 · 77 页

青空文庫

どう考えてもそうとしか思えないので、栄蔵はわざわざお節にお前ほんとに手紙で来いと云ったのかと尋ねたりした。

お節も保証したけれ共栄蔵には解せなかった。

達の若々しい体をながめながら一つ事ばかりを思って居た。

「お前ほんに大丈夫なんか。

夜になるまで四五度尋ねて、

お父さんどうしてそうなんです、

そんなに気になるならきいて御やりなさい。

と云われるほどだった。

その次の日から、一つ寝返りをうつにも若い男のゆったりした腕が、栄蔵の体の下へ入れられ、部屋の掃除などと云うと、布団ごと隣の部屋へ引きずって行く位の事は楽々された。

お節はこの力強い手代りをいかほどよろこんだか知れない。

「ほんにお前もいい若衆に御なりや。

惚れ惚れと鴨居に届きそうに大きい息子の体を見てお節は歎息する様な口調で賞めた。

たまに見る息子は非常に利口に、手ばしこく、物分りがよく見えた。

ちょくちょく見舞いに来る者共に一々達の事を吹聴して、お世辞にも、

「いい息子はんを御持ちやから貴方はんも御安心どすえなあ。

年を取っては、子のよいのが何よりどすさかい。

と云われればこの上なく満足して居た。