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きりゅうつうしん

桐生通信

坂口 安吾

「読売新聞 第二七七五五号~第二八〇二五号」1954(昭和29)年3月11日~12月6日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 16,394 字 · 33 页

青空文庫

ツケは町会へ行くのである。織物業は目下はなはだ不振で、桐生の町はデフレの上にも不景気らしく、メーンストリートの古いデパートまでパチンコ屋に身売りという昨今であるが、警察の交通整理同様に不景気もこのお祭にだけは歯がたたないのである。

★

さて、この祭の神社であるが、これが何より珍しいのである。

「桐生のギオン祭は何神社のお祭だい」

「祭礼のチョウチンにちゃんと書いてあるだろう。八坂神社のお祭だ」

ところが私がいくら探しても八坂神社というのが近所に存在しない。よってミコシのあとをつけたところが、すぐ私の家の裏の神社へ御神体を迎えに行き、祭の終りにもまたそこへ納めに行った。その神社は美和神社というのである。大国主のミコトの神社だ。八坂神社ならスサノオのミコトである。この美和神社は平安朝の神名帳にも記載のあるユイショある神社であった。そこで私はチリメンのおそろいをきているダンナにきいた。

「これは八坂神社じゃないぜ」

「八坂神社とよぶことになってるんだ」

「ちゃんと高札をたてて平安朝から名のある美和神社だと断り書きまであるじゃないか」

「社が三ツあるから一ツが八坂神社だろう」