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きりゅうつうしん

桐生通信

坂口 安吾

「読売新聞 第二七七五五号~第二八〇二五号」1954(昭和29)年3月11日~12月6日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 16,394 字 · 33 页

青空文庫

桐生の雪は新潟の雪と違って水気のすくない粉雪で、したがって少しの雪でもなかなか消えない。新潟の雪よりも桐生の雪の方がスキーに適している。

越後平野と関東平野は諸条件においてほゞ同じようになったと見ることはできないのだろうか。すくなくとも私が雪国で生れて一番閉口したのは秋なかばから一冬中太陽を見ることのできないせつなさであった。その太陽を一月なかばまで東京の空と同じように見ることができるなら、私にとってはもう雪国が雪国でなくなったとしか考えられない。太陽の光をもとめてイタリアへ馬車をいそがせたゲーテにはなはだしく同感したりした雪国の少年の悲しさももうなくなったと見るべきであろう。すくなくとも連日私の頭上にまぶしくのどかにかゞやいていた雪国の秋と冬の太陽を見あげて、私はそれを痛感せずにいられなかった。

この天候異変が新潟ばかりでなく雪国全体のものだとすれば、そして新潟ばかりでなく秋田や山形の水田にも二毛作ができるようになれば、日本の食糧事情も一変するようになるだろう。しろうと考えというものかも知れないが、雪国で生れて秋なかばからの一冬にかけて、太陽を見ることのできないせつなさにしょうすいするような思いで育った私が、冬の頭上に連日かがやいているのどかな太陽を見れば、もう雪国は終ったと考え、越後平野を関東平野と