轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
さくらのみのじゅくするとき
桜の実の熟する時
島崎 藤村
「文章世界」1913(大正2)年1~2月、1914(大正3)年5月~1918(大正7)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,569 字 · 222 页
沢山開く口唇のような梅の花は早や青梅の実に変る頃だ。捨吉はこういう場所を彷徨うのが好きに成った。彼は樹の葉の青い香を嗅いで歩いた。
浅い谷を隔てて向うの岡の上に浅見先生の新築した家が見えた。神田の私立学校で英語を授けてくれた浅見先生がこの郊外へ移り住んでいるということは捨吉に取っては奇遇の感があった。新築した家の出来ない前は先生は二本榎の方で、近くにある教会の牧師と、繁子達の職員として通っている学校の教頭とを兼ねていた。捨吉はしばらく二本榎の家の方に置いて貰った。そこから今の学窓へ通っていた。捨吉が初めて繁子を知ったのはその先生の家だ。玉子を彼に紹介したのも先生の奥さんだ。
「何時までも置いて進げたいとは思うんですけれど、家内はあの通り身体も弱し、御世話が届きかねると思いますからね――」
それが先生の家を辞する時に、先生に言われた言葉だった。
「私のすることは少許も貴方の為に成らないッて、そう言って叱られましたよ――私が足りないからです」
それが奥さんの言葉だった。
捨吉から見れば浅見先生は父、奥さんは姉、それほど先生夫婦の年齢は違っていた。奥さんは繁子や玉子の友達と言いたいほどの若さで、その美貌は酷く先生の気に入っていた。