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つちのなかからのはなし
桜の森の満開の下
坂口安吾『桜の森の満開の下』。同一底本的分册已合并为一书。收入:土の中からの話、家康、閑山、禅僧、小さな部屋、道鏡。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 76,558 字 · 153 页
ていたのである。
然し、二人の宿命の子は、そのようなことは振向きもしない。ただ常に天下第一の壮大華麗な遊びだけがあるだけだった。それは二人の意志のみではない。六朝をかけた家名の虫、女主人たちの意志だった。沈静なる女支配人たちの綿密な心をこめた霊気の精でもあったのである。
そして、宿命の二人に子供が生れた。娘であった。持統天皇がその強烈沈静な思いをこめてから六代、最後の精気が凝っていた。それが孝謙天皇であった。
*
三宝の奴と仕えまつると大仏に礼拝したその年の七月、聖武天皇は愛する娘に位を譲って上皇となった。新女帝はそのとき三十三だった。
この女帝ほど壮大な不具者はいなかった。なぜなら、彼女は天下第一の人格として、世に最も尊貴な、そして特別な現人神として育てられ、女としての心情が当然もとむべき男に就ては教えられていなかったからだ。結婚に就ては教えられもせず、予想もされていなかった。父母の天皇皇后はそのように彼女を育て、そして甚だ軽率に彼女の高貴な娘気質を盲信した。我々の娘だ。特別な娘だ。男などの必要の筈はない、と。
首皇子を育ててくれた祖母の元明天皇も、伯母の元正天皇も、未亡人で、独身だった。