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つちのなかからのはなし

桜の森の満開の下

坂口 安吾

坂口安吾『桜の森の満開の下』。同一底本的分册已合并为一书。收入:土の中からの話、家康、閑山、禅僧、小さな部屋、道鏡。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 76,558 字 · 153 页

青空文庫

押勝とは、暴を禁じ、強に勝ち、戈を止め、乱を静めたという勲の、雄々しい風格の表現だった。そして大保に任じ、あまつさえ、貨幣鋳造、税物の取り立てに、恵美家の私印を勝手に使用してよろしいという政治も恋も区別のない出鱈目な許可を与えたのである。

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孝謙天皇の皇太子は道祖王で、天武天皇の孫に当り、他に子供のない聖武天皇は特にこの人を愛して、皇太子に選んだ。それは聖武の意志であり、政治に就て親まかせの孝謙天皇は、まだその頃は皇太子などはどうでもよくて、自身の選り好み、差出口はしなかった。

恵美押勝(まだその頃は藤原仲麿だったが、時間の前後による姓名の変化は以後拘泥しないことにする)はその長男が夭折した。そして寡婦が残された。そこで道祖皇太子の従兄弟に当る大炊王を自邸に招じ、この寡婦と結婚させて養っていた。彼は女帝が皇太子に親しみを持たないことを知っていたので、それを廃して、大炊王を皇太子につけたいものだと考えていた。

死床についた上皇は、天下唯一人の女であらねばならぬ娘が、やっぱりただの肉体をもつ宿命の人の子であることに気附いていた。上皇はただ怖しかった。