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つちのなかからのはなし
桜の森の満開の下
坂口安吾『桜の森の満開の下』。同一底本的分册已合并为一书。收入:土の中からの話、家康、閑山、禅僧、小さな部屋、道鏡。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 76,558 字 · 153 页
それにしても、機会の訪れは早すぎた。諒闇中に、皇太子が侍女と私通した。女帝から訓戒を加えたけれども、その後も素行が修まらない。春宮をぬけだして夜遊びして、一人で戻ってきたり、婦女子の言葉をまに受けて粗暴な行いが多く、機密が外へもれてしまう、それが罪状の全てであった。
諸臣をあつめて太子の廃否を諮問する。天皇の旨ならばそむかれませぬ、大臣以下諸臣の答えは、そうだった。即日太子を廃して、自宅へ帰してしまったのである。
改めて太子をたてる段となり、右大臣豊成と藤原永手は塩飽王を推した。文室珍努と大伴古麿は池田王を推した。押勝のみは敢てその人を名指さず、臣を知る者は君に如かず、子を知る者は親に如かず、天皇の選ぶところを奉ずるのがよかろう、と言う。口惜しいけれども、正論であった。そこで聖断をもとめると、もとより天皇の言うところはきかぬ先から分っている。船王は閨房修まらず、池田王は孝養に闕けるところがあり、塩飽王は上皇がその無礼を憎まれており、ただ、大炊王だけは若年ながら過失をきいたことがないから、と、押勝の筋書通り、すでに押勝の意志するところが、女帝の意志に外ならなかった。