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つちのなかからのはなし
桜の森の満開の下
坂口安吾『桜の森の満開の下』。同一底本的分册已合并为一书。收入:土の中からの話、家康、閑山、禅僧、小さな部屋、道鏡。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 76,558 字 · 153 页
「たった二斗の酒ぐらいに、牛に生れて八年というのはむごいことでございます。どうか、ごかんべん下さいまして」
「いやいや。飛んでもないことを仰有るものではない。ちゃんと経文にあることだから、仕方がないと思わっしゃい。それとも地獄へ落ちて火に焼かれ氷につけられる方がよろしいかの。八年ぐらいは夢のうちにすぎてしまう。経文にあることだから、牛になって八年間は働いてもらわねばならぬ」
「お前さん経文にあることだから仕方がないよ。元々お前さんがだらしがなくて返せなかったのだから、牛に生れ変って返さなければいけないよ」
「そうか。なんという情ないことだろう。こんなことになるぐらいなら、もっと早く働いて返せばよかった」
男はハラハラと涙を流して悲しんだが、仕方がない。その晩、息をひきとった。
翌朝になって小坊主が門前を掃きにくると牛が一匹しょんぼりしている。別に縄につながれてもいないのに、お寺の門前にしょんぼりして動かないから和尚に告げた。ああ、そうか、よしよし、それではゆうべ死んだものとみえる。それはウチの牛だから今日から野良に使うがよい。オヤ、そうですか。和尚さまが買っておいでになりましたのですか。