轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
つちのなかからのはなし
桜の森の満開の下
坂口安吾『桜の森の満開の下』。同一底本的分册已合并为一书。收入:土の中からの話、家康、閑山、禅僧、小さな部屋、道鏡。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 76,558 字 · 153 页
改めて今川の人質となってお寺住い、坊主から教育を受けて十五まで他人の飯をくって育ったのである。
八ツの年に、人質にでている間に父を失ったのであるから、家康には父の記憶がなかった。広忠は二十四の若さで死んだが、聡明な人だが病弱で神経質で短慮であったという。家康にとって父の記憶といえば父の風貌面影に就ては殆ど何も残っていない。ただ、今川へ人質に送られる途中、織田家の者に奪いとられ、その彼自身を種にして織田から徳川へ一味にせまったとき、子供ぐらい勝手にするがいいさ、同盟は破られぬ、とキッパリ答えてきたという父、これぐらいハッキリと記憶に残っている父はないのである。殺されるべき六歳の家康は殺されもせず、むしろ鄭重に育てられた。それは今川家に於けるお寺暮しの八年間よりもむしろもてなされ、いたわられたほどで、したがって家康の織田に対する記憶は元来悪くない。しかしながら、幼少年期の数奇な運命を規定した一つの原理、原理という言葉は異様な用法に見えるかも知れないけれども、幼少の家康にとって、それは恰も原理の如きものであったと思われる。なぜなら少年にとっては最も強烈な印象、強烈な信仰が原理なのであり、それは家康にとって最も強烈な印象であり信仰に外ならなかったからである。