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ふくろうのめ

梟の眼

大倉 燁子

「キング 一三巻三号」1937(昭和12)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,354 字 · 23 页

青空文庫

ありゃ私が持っていた偽物ですわ。それを使ったのよ」

「用意周到だなア。しかし、偽物を返してもらったって、儲からないじゃあないか」

「あの場合は目的が別にあったから、儲けなくってもよかったんですわ」

「どんな目的?」

「あなたにお会いしたかったからよ。お妹さんに御紹介して頂こうと思ったの、そのためにあんな苦労して、狂言まで書いたんですわ」

春樹は少し擽ったかったが、それでも悪い気持はしなかった。

「今夜は君の話につられて来たんだが――、世界的のスリなんて、どれがそうだか分りゃしない。失望しちゃったよ」

「まあ! 妙な事に興味を有ッてるのね。世界的の名人って、大抵知れてるわ。私なんかの眼から見りゃ――」と云いながら、ちょっと起ち上ったが、どうした拍子にか靴を辷べらせて、危ぶなく前へのめりかけた。彼は中腰になって、肩を支えてやった。彼女は起ち直ると顔を赤くしながら、

「これは、――私が頂きましたよ」と云ッて、彼の掌の上に、冷めたい、シャリッとしたものを載せ、「ダイヤのネックレース!」と力をこめて云った。春樹は胸がドキンとした。夢中でそれを睨んだ。薄墨色の女は誇らしげに細い鎖を撮み上げていたが、低い、小さい声でアッと叫んだ。