轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
03 第三部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 167,285 字 · 330 页
床間には山水の大幅が掛けてあり、白磁の香炉から、うす青い煙が、ゆるやかに立っていた。
隠居の慶月院(甲斐の母)は六十五歳になる。痩せてはいるが、しっかりした躯つきで、眼にも力があるし、口のききかたなども歯切れがよく、いまだに親族のあいだで、女丈夫といわれる意味が、その風貌によくあらわれていた。
慶月院と相対して、伊東新左衛門が坐っていた。彼はまえの日にこの館へ着いたのだが、持病があるのと旅の疲れとで、着くとすぐ寝所で躯を休め、いま初めて、隠居所へ挨拶に来たのであった。――青根で甲斐と会ったとき、彼は肥えているようにみえたが、いまはひどく痩せているし、皮膚の色も蒼黒く、艶がなかった。
「痩せたのがいいのです」と新左衛門は軽い咳をした、「四月ごろまでは肥えていたのですが、肥えていたのではなく浮腫だそうで、痩せ始めてからは、立ち居も楽になりましたし、病気も快方に向かっているのだと、医者が申しておりました」
「それが本当ならよいが」と慶月院は危ぶむように彼を眺めた、「見たところ膚のお色も悪い、その咳もこころもとない、もう少し丈夫になるまで、養生されるがよくはありませんか」