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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
03 第三部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 167,285 字 · 330 页
、一両年ならなんとでも凌ぎをつけるから、それで当座をまかなってもらいたい、ということでございます。
「知行献納か、ふん、そういう手で来たか、あのじじい、そういう手があったのか」
――涌谷でこう云いだされますと、知行を献納すると云う向きが、ほかにも出て来ると存じますが。
「あのじじいめ」
――おそらく、御一門ほか重職へも、この旨を通じてあることでございましょう、いかがあそばしますか。
「岩沼(田村右京)と相談してみよう、今年は亀千代どのの袴着があり、来年は将軍家の初の謁見がある、増し合力はどうしてもやむを得ないのだ、とにかく、すぐに岩沼と相談してみよう」
――次に、伊東新左衛門が出府いたしました。
「病気だと聞いたが」
――昨日到着して、すぐ医者の診察を受け、数日は休養のためにひきこもるとのことでございます。
「三カ条は諦めたのか」
――いや、奥山左内(伊東家の老臣)よりの書面によりますと、三カ条の誓紙がもらえなければ、国老就任は辞退する肚のようで、その仔細は松山にも話したもようだと、書いてまいりました。
「三カ条は呉れてやろう」
――御思案がございますか。
「三カ条は呉れてやる、呉れなければ国老にはならぬ、という言質を取ったうえでだ」