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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

05 第五部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,443 字 · 398 页

青空文庫

たいていの日本人は、何かというと、表面堂々とした理由で自分の行動を弁護したり、飾ったりする。しかも、それで他人をごまかすだけでなく、自分自身の良心をごまかしている。それをずるいなどとはちっとも考えない。これはおそろしいことだ。友愛塾の一つの大きな使命は、共同生活の実践を通じて、青年たちをそうしたずるさから救い、真理に対してもっと誠実な人間にしてやることだ。」というような意味のことを、いったことがあったが、次郎は、便所の中から、飯島のうしろ姿を見おくりながら、その言葉を思いおこし、今さらのように、大きな困難にぶっつかったような気がしたのだった。

飯島の足音がきこえなくなると、小便所の掃除をしていた四人が、かわるがわる言った。

「すいぶん、ちゃっかりしているなあ。」

「何しろ紳士だからね。」

「郡の団長なんかやってると、あんなふうになるもんかね。」

「そりゃあ、あべこべだよ。あんな人だから、郡の団長なんかになりたがるんだ。」

「つぎは、そろそろ県会議員というところかね。」

「ふ、ふ、ふ。」

「そういうと、ゆうべの室長選挙も何だか変だったぜ。」

「はじめから、自分が室長だときめてかかっているんだから、かなわないよ。