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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
05 第五部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,443 字 · 398 页
おもに口をきいたのは、先生と恭一と大河の三人だった。中でも大河が主役の観があった。それは、朝倉先生も、恭一も、大河を相手に話しかけがちだったからである。
次郎はほとんど聞き役だったが、かれの関心の中心もやはり大河だった。かれはまず第一に、大河の頭が論理的にもすばらしく緻密であるのにおどろいた。しかし、いっそうおどろいたのは、その緻密な論理の中から、間歇的に、気味わるいほどの激しい情熱と強い意力とがほとばしり出ることだった。大河は、いつも半ば顔を伏せ、眼をつぶるようにして、ぼそぼそと、落ち葉をふむ足音のような声で話すくせだったが、何か大事だと思う話の焦点にふれだすと、その眼は、やにわにぎらぎらと光って相手をまともに見つめ、その厚い真赤な唇からは、青竹をわるような澄んだ調子の高い声が、つづけざまに爆発するのだった。
次郎が、その日感銘をうけた大河の言葉は、一つや二つではなかったが、とりわけ心に深くしみたのは、つぎの言葉だった。
「先生は、さっき、ぼくを、孔子やソクラテス型の哲人だなんて持ち上げてくだすったんですが、ぼくは、実は、そんなふうに言われると、悲観するんです。