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れきしたんていほうほうろん
歴史探偵方法論
「新潮 第四八巻第一一号」1951(昭和26)年10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,900 字 · 16 页
この場合相手の証拠を否定するには更に有力な物的証拠によって反証をあげなければなりません。しかし古代の異人の見聞記でも時には正しいことがある、という万が一の可能性が証拠によって示されていない以上は、これを史実とみて古代史を解くカギの一ツに用いることは許されない。万が一どころか、二分の一の可能性でも、その確かなことが物的に証明せられぬ以上は犯人をつきとめる証拠とはならないのです。
いずれにせよ物的証拠があっては抽象論は無力ですが、しかしながら、外国人がたまたま未開国を歩いた見聞記が正確な事実を伝える場合もありうるという可能性は甚だ低いものですが、文化の低い古代人が史書に複雑なカラクリを施す力がない、というのは大胆な論断にすぎるようです。昔から家を起し、大名になったり、財産ができたりすると、誰しも系図をつくりたがる。むろん自分は名もない生れだから尚さら系図をつくり、源氏や平家に始まるニセの系図をつくって見せびらかす。これは人間の本能的なもので、神から位をゆずられたとか、天狗や仙人から術を習ったとか、由緒書の文句で愚民をまどわして信用を博すは未開人や文化の低い人間ほど強いものだ。