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れきしたんていほうほうろん
歴史探偵方法論
「新潮 第四八巻第一一号」1951(昭和26)年10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,900 字 · 16 页
同一人が二ツの論を行うことができるし、誰しも二ツながら行うのが当然だが、一方の結論から一方の結論が生れる性質のものではなくて、二ツの論が別個の物であることは常識であるし、誰も混同しない。
ところが史家や歴史愛好家には往々にして歴史評論の偏見の支えを、史実判定の方法に混同して怪しまずに用いている傾きが見られるのである。証拠の真偽をたしかめて史実を定めるということは冷静な検討を要することで、頭から湯気をたててやることではない。
証拠をあげて史実を定める歴史というものはその推理の方法がタンテイと完全に同一であるのが当然であるが、史家はその方法に於て概ね狂っているし、狂った方法を疑うことも知らない。現代のタンテイ眼から見ると、日本の史家のタンテイ法はまったく神代的で、銘々が手前勝手で、幼稚というか拙劣というか、いくら書物をタクサン読んだって推理や立証の仕方に狂いがあって、推理力が劣等ならば意味をなさない。史家にとって史料を多く読むことも大切な学問であるけれども、史実を突きとめるためのタンテイ眼や推理力が狂うならばゼロで、歴史という学問にとってタンテイ眼こそは心棒であり、チミツで正確なタンテイ眼があってはじめて史料を読む仕事が生きた学問となるのである。