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れきしたんていほうほうろん

歴史探偵方法論

坂口 安吾

「新潮 第四八巻第一一号」1951(昭和26)年10月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,900 字 · 16 页

青空文庫

法廷をひらいて歴史の真偽を争う必要はありません。法廷をひらく、ということが真偽を定める方法なのではなくて、殺人事件が法廷で争われる場合には、証拠が真であるか偽であるか、それを定める規準があるから法廷へもちだして争いうる。ところが歴史学者の場合は規準がテンデンバラバラで、また歴史はそれでよいのだと思っていらッしゃる傾きがある。しかしながら、証拠を判定する規準というものは、歴史の証拠でも現代の証拠でも変りのある筈はありません。証拠の真偽を判定する規準はただ一ツあるのみです。

史家の仕事のうちにも史家の偏見が許される場合もあるが、それとこれと混同しては不可である。たとえば信長、秀吉、家康などの人物を論ずる場合には偏見が許されることもあるが、それは人物評論としてである。史家の真偽を判定する場合とちがって、アバタもエクボ、誰が何と云ってもオレはコレコレの点で信長が好きだ、コレコレだから信長は偉い、という、偏見の支え方や偏見の立て方が面白がられる評論だ。現代のタンテイの場合にしても平沢画伯が犯人であるかないかという事実の認定に関する論と、平沢画伯は偉いかバカか、好きかキライかという論とは完全に別の物だ。