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しのこうかい

死の航海

国枝 史郎

「秘密探偵雑誌」1923(大正12)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,634 字 · 18 页

青空文庫

一

一

昨日のように今日も矢っ張り太陽は西に沈んで行く。

夕陽に照らされた地中海は猩々緋のように美しい。船々の甲板、船々の船檣、そして船々の煙突は焔のように輝いている。

阿弗利加の南端。ポートサイド港。季節は夏の真中であった……。

港には人々が出盛っていた。ニスのような皮膚をしたヌビヤ人、ターバンを巻いた亜剌比亜人。袍を纏った波斯人。そうして皆喋舌っていた。多くは大道商人である。

「沙漠から掘り出した金剛石! 大負けに負けて七十銭じゃ! どうじゃなどうじゃな、いらんかな!」

「波斯絹布を買わんかな! 大幅一丈が二円とはどうだ! 安売安売、大安売じゃ!」

「アビシニアで捕らえた甲虫! 宝石のように美しい! 一匹五厘じゃ! 買ったり買ったり」

「薄荷を買わんかなスダンの薄荷を! 肉桂を買わんかなメッカの肉桂を!」

彼等は大方裸体である。そうして大方洗足である。

盛装を凝らした貴婦人を連れた欧羅巴人も歩いている。官吏。旅行者。会社員。運河開鑿の技師なども……。

葉巻をふかしながら一人の紳士が伴れの貴婦人に話しかける。

「……何んというガサツの町でしょう。ポートサイドというこの町は」