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ぼこうふっこう

母校復興

佐々木 邦

「現代」大日本雄辯會講談社、1926(大正15)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,891 字 · 15 页

青空文庫

と言ったぜ。まさか先生を突き飛ばす次第にも行かないからなあ」

「乱暴だよ、彼奴は、確かに」

と他に共鳴するものもあった。

そこへ、

「やあ、お揃いだね」

と噂の主の早川さんが現れた。先生もこの中学の卒業生で而も第一回だ。高師を出て以来三十年近く母校の数学を受け持っている。落第は大抵この人がさせてくれる。余所から来た先生なら疾うに問題になるのだが、同窓の先輩だから、皆恐れて勉強する。凡そ服装に構わないこと数学の教師より甚しいものはない。中学校へ数学の先生に会いに行ったら、受附や小使を煩すまでもなく、直ぐに教員室へ入って行って、カラーの一番汚い人に話しかけるが宜しい。十中八九まで間違ない。その数学の教師でも早川さんのように徹底したのは滅多にない。白シャツが面倒だと言って、烏賊の甲という胸丈けの奴をつけている。この先生がショーウィンドーから出て来たような百貨店営業課長の隣りへ腰を下したのだから可笑しいくらい目立った。

「先生、お久しぶりですな」

「やあ」

「皆で先生のお噂申上げていたところです」

「然うかい。何れ悪口だろう」

と早川さんは察しが好い。尤も数学を教えて人に褒められると思うほど血の繞りの悪い男もあるまい。