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みずのしたのいし
水の下の石
山本 周五郎
「新武道」1944(昭和19)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,791 字 · 28 页
「よかろう、それから……」藤八郎はさりげない調子で云った、「潜入させる兵は惜しい者になるな」「……そうだ」ふと図書助は眼を伏せた、「こういうときにはきまって、いちばん惜しい兵に死んで貰うことになる、これがなにより……」呟くように云いかけたが、図書助はふいと手を振り、会釈をしておのれの陣へと帰った。
旗がしらに呼ばれた安倍大七は、仔細を聞いているうちにわれ知らず微笑をうかべた、かれはその困難さを思うまえに敵城へ潜入して要所要所へ火をかける自分の姿を想像した、かれはいつもそうである、性質というよりも戦場の経験から得たもので、事に当るときまずその成就を確信する、――広間に席がひとつ空いている、かれはよくそう云った、――それはそこへいって坐った者の席になる、合戦もおなじことだ、戦は生きもので決定的なところへゆくまで勝敗はわからない、そして勝敗を決するものは勝つという確信だ、勝つと信ずるものが必ず勝つんだ。いま図書助から大役を申しつかりながら、かれは少しも遅疑せず、早くも炎上する敵の矢倉の火を見る気持だった。「……つれてまいる