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こおりぐらのにかい

氷蔵の二階

宮本 百合子

「女性」1926(大正15)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,201 字 · 37 页

青空文庫

「ひゃあ、どうも辛辣だな。いくつに見えます」

「そうね、二十七? 八?――とにかく五以上でしょう」

「うまく当てたわね、七よ。私と四つ違い」

房は何となしひとりでに微笑が唇に浮ぶのを感じた。

大垣は十一時頃までいた。志野は、階子口まで送って戻ると、いきなり房に感想を求めた。

「ね一寸、どう? あの人」

「どうって――こないだうちよくあなた行ったの、あの人んところ?」

志野は、眼に輝きを遺したまま合点した。

「どう思う?」

「何として、どうかっていうの?」

「意地悪!」

二人笑った。

「ね、真面目にさ」

房は、志野がこの間、恍惚(うっとり)として考えながら呟いた言葉を思い出した。

「だって――もう、あれなんじゃあない? お互にすっかり定ってるんでしょ?」

志野は案外そうな顔をした。

「分る?――あなたに」

「いやあよ、あんな口利て誰だって……」

「本当?――私もう云っちゃおう! ね、私もう、直きあの人と結婚するのよ、多分」

「――……大丈夫なの、どんな人だか知らないけど」

「局だって皆いい、面白い人だって云ってたわ――そりゃ」

志野はほんの少し悄気(しょげ)た。

「今はまだ月給だって少しだけど、どうせ私なんぞ、これから共稼ぎでやりあげる人でなくちゃ駄目だもん。