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さばくのびき

沙漠の美姫

国枝 史郎

「サンデー毎日」1928(昭和3)年4月22日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,658 字 · 14 页

青空文庫

「さあ」と私は薄ら笑いをしたが、

「日本の大衆作家ではね、匈奴の美しい娘さんには、愛されそうもありませんよ。それに私の肉体は、随分いたんでおりますのでね。都会文明の阿片の毒が、骨にまで滲み込んでいるのです。逞い腕なんかで捲かれようものなら、ハッ、ハッ、ハッ、窒息をします」

「可哀そうね、可哀そうな人ね」

「それに少し倦きましたよ」

「何が?」

と王昭君は眼を見張った。

「匈奴の国の生活にですよ」

「あなたは少し倦きっぽいのね」

「いや寧ろそれはこういった方がいいので。生活力が弱いのだとね。――或点までは適させて行くが、度を越すと反動的に隠遁的になります」

「それでは出世しませんよ」

「中位には出世もします」

「敢為の気象をお出しなさいよ」

「何等かの感激でも来ましたらね」

「何う? 接吻は? 私の接吻は?」

こういって王昭君は口を尖らせた。

「ご面蒙ろう!」と断ってしまった。

「それは私を頓死させることです」

九十歳になった時に王昭君は死んで盛大極まる儀式の下に、豊州の西から六十里の地点の振武軍金沙県の西北の曠野へ、まことに鄭重に葬られた。胡沙の地は不毛であるがために、草は白色を呈しているが、九十になっても美貌であったところの、王昭君の墓地へばかりは、青い色の草が茫々と生えて、不遇な美姫の悩みある魂を慰めたなどと中華の詩人が、笑う