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なみあらくとも
波荒くとも
小川 未明
「小学五年生」1939(昭和14)年3月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 5,368 字 · 11 页
一
一
鉛色をした、冬の朝でした。往来には、まだあまり人通りがなかったのです。広い路の中央を電車だけが、潮の押しよせるようなうなり声をたて、うす暗いうちから往復していました。そして、コンクリート造りの建物の多い町の中は、日の上らない前の寒さは、ことに厳しかったのです。
十三、四の小僧さんが、自分の体より大きな荷を負って、ちょうど押しつぶされるようなかっこうをして、自転車に乗って走ってきたが、突然ふらふらとなって、自転車から降りると、そのまま大地の上へかがんでしまいました。そこは石造りの銀行の前でした。堅く閉まったとびらが、こちらを向いてにらんでいるほか、だれも見ているものがありません。少年は、しばらくじっとしていたが、そのうちはうようにして、やっと背中の重い荷物を銀行の入り口の石段の上に乗せて、はげしく締めつける胸の重みをゆるめたが、まだ気分が悪いとみえて、後ろ頭を箱につけて仰向けになったまま目を閉じたのでした。小さな肩のあたりが、穏やかならぬ息づかいのためにふるえています。小僧さんは、こんなにして倒れていたけれど、ときどき思い出したように電車のうなり音が訪れてくるほかは、だれもそばへよってきて、ようすをたずねるものもありませんでした。