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なみあらくとも

波荒くとも

小川 未明

「小学五年生」1939(昭和14)年3月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 5,368 字 · 11 页

青空文庫

「ねえ、気分がわるいの?」と、彼女は、聞きました。けれど、小僧さんは、なんとも答えませんでした。

「気分がわるいの?」と、彼女は、こんど耳もとへ口を近づけて、いいました。けれど、小僧さんには、答えるだけの気力がなかったのです。

「かわいそうに、こんな大きな荷物を負わせて、寒いのに働かすからだわ。」

「重いのでしょう。私、あんたといっしょにお家へいってあげるわ。そして、ご主人によく話してあげますから、お所をおっしゃい。」

こういった、彼女の目の中には、いつか涙がわきました。しかし、少年は意識がないのか、返事がなかったのです。

「きっと、病気なのかもしれない。それなら早くお医者に見せなければ……。」

彼女は、自分がお使いに出て、主人の待っていることも忘れていました。

みつ子は、このことを交番に届けなければならぬと考えました。さっそく交番の方へ走っていきました。彼女のいうことを聞いた、巡査さんは、

「朝飯を食べずに出て、つかれたのではないか。」と、軽く想像しました。

「いえ、顔色が青く、たいへんに苦しそうです。」と、みつ子はいいました。みつ子は、今年十六になったのです。