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なきんぼうのはなし
泣きんぼうの話
小川 未明
「時事新報」1922(大正11)年8月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,184 字 · 5 页
ほれ、ほれ、みんな出て坊やを見てたまげていなさる。あっちをごらん。」と、おばあさんは、子供の気をまぎらせようと苦心しました。けれど、子供は、泣きやみませんでした。
このとき、あちらの家から、だれか頭を出しました。
「あ、やかましくてしようがありませんね。泣かないようにしてください。」といいました。
「ほら、ごらん、やかましいとおっしゃる。いい子だから泣くでない。」と、おばあさんは、しわの寄った額ぎわに汗を結んで、子供に頼むようにいいました。
すると子供は、かえってあちらの方を向いて、いまよりも、もっと大きな声を出して泣きました。どうして、こんなに大きな声が、こんな子供の体から出るだろうかと、だれしも思わないものがなかったほどであります。
おばあさんは、孫の泣くのを見て、
「いまに、みんな血が頭に上ってしまって、ガンといって、頭がわれてしまうよ。」と、心配しました。
昼寝をしようと思って、家の中で、できなくてまゆをひそめているものは、いまにもあの声から火が出て、あたりの家や、草や、木に燃えついて、空が真紅になりはしないかと思っていたのです。
おばあさんは、ほんとうに困ってしまいました。