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りゅうせんスパイ
流線間諜
海野 十三
「つはもの」1934(昭和9)年~1935(昭和10)年頃
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,982 字 · 70 页
「そんなことは分っている。それ以上のことを云いたまえ」
「だから云ってるではないか。残りの半分のマッチの棒は、あの銀座の鋪道に斃れた川村秋子という懐姙婦人が喰べてしまったのだ」
「ナニ、あの女が喰べた?……」
「そうだ」と帆村は首領の駭くのを尻目にかけて喋りつづけた。「喰べたから、擦り痕がついていないのだ。喰べても大して不思議ではない。姙婦というものは、生理状態から変なものを喰べたがるものだ。この場合の彼女は、胎児の骨骼を作るために燐が不足していたので、いつもマッチの頭を喰べていたのだ。あの日も何気なしに、あのマッチ函を君の一味から買ったのだ、そこは店の表から見ると、何の変哲もない煙草店だった、だからそんな恐ろしいマッチともしらず、君の仲間が間違えたまま一函買いとってそしてガリガリ噛みながら、銀座へ出てきた。ところが……」
「ところが――どうしたというのだ」
「ところが、そのマッチは特別に作ったもので、燐の外に、喰べるといけない劇薬が混和されていたのだ。イヤ喰べるとは予期されなかったので劇薬が入っていたのだといった方がよいだろう。その成分というのは……」
「うん。