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りゅうせんスパイ

流線間諜

海野 十三

「つはもの」1934(昭和9)年~1935(昭和10)年頃

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,982 字 · 70 页

青空文庫

――帆村が云い含めてあったのか、この騒ぎのうちに、彼に救われた「赤毛のゴリラ」はサッと部屋から飛び出していった。

「右足のない梟君!」と帆村は逆手をとったまま首領に云った。「君の覆面は武士の情で、その儘にして置いてあげよう。――さあ、これから君にちと働いて貰わねばならぬが、それはこの巣窟の案内だ。ここにはいろいろな怪しい仕掛があるようだ。第一に気になるのは君が先刻まで掛けていた椅子についている梟の彫刻だ」

といって帆村は首領の座席だった椅子を指した。

「怪しいと思うのは、あの梟の眼だ。あれは押し釦になっているに違いない。君を傍へ連れてゆくから、ちょっと圧してみてくれないか」

と帆村は首領を椅子のところへ連れてゆき、

「さあ、まず右の眼を圧してみてくれ給え」

「いやだ。乃公は圧さない」

「圧さなければ、貴様こそ地獄へゆかせてやるぞ。この短刀の切れ味を知らせてやろう」

「待て。では圧そう」

「どうせ圧すなら、早くすればいいのに……」

全く主客は逆になった。――首領は渋々指をさしのべて、釦をギュッと圧した。その途端にジージーガチャリガチャリと機械の動き出す音が聞えだした、と思うと正面の鉄壁が真中から二つに割れ、静かに静かに左右へ開いていった。