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りゅうせんスパイ

流線間諜

海野 十三

「つはもの」1934(昭和9)年~1935(昭和10)年頃

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,982 字 · 70 页

青空文庫

そしてその後から何ということだろう、竪横五メートルほどの大壁画が現れたがそれは毒々しい極彩色の密画で、画面には百花というか千花というか凡そありとあらゆる美しい花がべた一面に描き散らしてあった。

万花画譜! 密偵の巣窟に、この似つかわしからぬ図柄は一体どんな秘密を蔵しているのであろうか。

呪いの極東

灰色の敵の巣窟に、これは又あまりにも似つかぬ極彩色の大図譜!

英才をもって聞えた帆村探偵も、この花鳥絢爛と入り乱れた一大図譜をどう解釈してよいやら、皆目見当がつかず呆然としてその前に立ち尽すばかりだった。――この壁掛図が、部屋飾りのために掛けてあるのでもなく、また偶然そこにあったというのでもないことは極めて明瞭だった。すると、

(――この大図譜こそは、×国間諜団の使命に密接な関係のあるものでなければならぬ!)

帆村はそれを確信した。

では、その図譜の持つ謎をどこに発見したものだろう。彼はいままでに、いろいろと複雑な暗号にぶつかったが、こんな種類のは始めてだった。尚身近くには油断のならない敵手「右足のない梟」がいて、ピストルに隙さえ見出せるならあべこべに彼の生命を脅かす位置に取代ろうと覘っている。