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うかぶひこうとう
浮かぶ飛行島
海野 十三
「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 124,009 字 · 249 页
カラモと名乗っているわが川上機関大尉は、冷やかにエンジンの番をつづけていた。ピストルがどこへ向いているか俺は知らんぞといった調子である。生きるか死ぬるかの問題なんか、飛行島に紛れこんだ時から、もう神仏にあずけてしまってあるのだ。そしてこの場合、やがて起るべきあることを待っていた。
だだだっと靴音もあらあらしく、ケント兵曹が奥から駈けだしてきた。
「分隊長、たいへんです」
「たいへん? ど、どうした」
「海底牢獄の囚人が脱獄しました」
川上機関大尉の決心
海底牢獄というのは、飛行島で働いている者の中で、許しておけないようなことをやった人間を捕らえて、おしこめておく牢獄であった。それは飛行島を水上に浮かばせている脚柱の下についている鉄筋コンクリートの浮函の中に造ってあった。そこは水面よりはるかの下になっているので、海底牢獄の名がついているのだ。当時、その中に放りこまれている囚人は五、六十人あった。多くは建設役人の命令に反抗した中国人や印度人であった。
「え、脱獄したって」
と分隊長フランクが聞きかえすと、ケント兵曹は、
「そうです。私が倉庫エレベーターで下へおりようとしましたところ、エレベーターの綱条につかまって脱獄囚が下からどやどやと上ってきたのにはおどろきました」