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うかぶひこうとう

浮かぶ飛行島

海野 十三

「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 124,009 字 · 249 页

青空文庫

「うむ、なるほど」

長谷部大尉は、ぎくりとして九谷焼を下に置いた。そして腕組をすると、

「なるほどねえ、――」

と、もう一度なるほどをいった。

川上機関大尉は、すっかりいい気持になって、盛んに酒盃をあげながら、

「おい、未来の提督よ。飛行島の話はそれまでだ。この次、日本酒をのむことがあったら、そのとき今のことをもう一度思い出してみてくれよ。いや、口頭試問はこの辺で打切として、まあ落第点は可哀そうだから、大負けに負けて六十点をやるかな。うわっはっはっ」

川上機関大尉は、はじめて腹の底から声を出して笑った。

司令官に面会

その翌朝のことであった。

長谷部大尉は、毎朝の日課の点検その他が終ると、ひとりでことことと狭い鉄梯子を伝って機関部へ下りていった。

当番下士官が、椅子からとびあがって、さっと敬礼をした。

「おう。川上機関大尉はいられるか」

するとその兵曹は直立したまま、

「はっ、川上機関大尉は只今御不在であります」

「ほう、どこへ行かれたのか」

「旗艦須磨へ行かれました。司令官のところにおられます」

「なに、司令官のところへ。――うむ、ではまたあとから来よう」