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うかぶひこうとう

浮かぶ飛行島

海野 十三

「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 124,009 字 · 249 页

青空文庫

「びっくりするものって何だ!」

「うふん、驚くな、いいか。貴様が杖とも柱とも頼む川上機関大尉の死体だ」

「ええっ、な、な、何だって?」

「あっはっはっ、いよいよ貴様も、木から落ちた猿と同じことになったよ。ざまをみろ」

ジャックは憎々しげにいい放った。杉田二等水兵は腸を断たれる思であった。ああ、わが川上機関大尉も遂に悲壮な最期をとげられたか、――車は、観念の眼をとじた杉田をのせていよいよ現場についた。

するとリット少将から意をふくめられたジャックが、杉田のそばへよってきて、

「さあ杉田水兵、ここにころがっている死体を見ろ。お前の上官だ。川上機関大尉だ」

と、杉田の肩をつついた。

杉田は、寝台の上で、思い悩んだ。会いたい、見たい。いやとびつきたい程の思であるが、上官の亡骸に、生きて相見えることは部下として忍びないものがあった。

「おい、杉田、お前は大尉に会いたくないのか?」

とジャックはあざ笑いながらうながした。

杉田二等水兵は、遂に心を決したらしく、体を動かした。二人の看護婦は、それをうしろから抱きおこした。

傍に並ぶリット少将はじめみんなの眼は、杉田の顔の上に吸いつけられたようになっていた。